サッカー日本代表・三笘薫選手(26)は、イングランド挑戦1年目の今シーズン、公式戦10得点7アシストと結果を残しました。サポーターたちの心もぐっと掴んでいます。
なかでも最大の武器、ドリブルは世界最高峰の舞台でも脚光を浴びました。“三笘のドリブル”。なぜ抜けるのか。その疑問を解決すべく、12台のカメラと共に、元日本代表の右サイドバック・内田篤人さんがマッチアップし、その極意に迫りました。
内田さん:「ここから実践してもらいます。僕、昔サッカーやってたんですよ。この守りのポジションで。1回だけ1対1してください」
三笘選手:「はい」
内田さん:「はや~い!ずるい!それは止めれん」
今回、検証するのは、FAカップ4回戦ブライトン対リバプール戦。三笘選手に対し、イングランド代表のA=アーノルド選手に加え、ギニア代表のケイタ選手、エジプト代表のサラー選手が対応した場面です。
いとも簡単に突破した、この場面を再現。内田さんには、アーノルド選手と同じ右サイドバックをやってもらい、実演を交えながらひも解いていきます。
■突破のカギ(1)ボールの置き所
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内田さん:「1対1ではなく、ほぼ3対1でした。この時に考えていたことはなんですか」
三笘選手:「この時に、先のスペースは認識してるんで、縦に行っても入り込むことができると思っていて、サラー選手が来るかを見ていたが、来なかったので、(アーノルド選手と)1対1の状況」
一見すると3対1の状況ですが、三笘選手にとっては、アーノルド選手との1対1。スペースに抜けるため、ある駆け引きを仕掛けました。
それが“ボールの置き所”。突破したいコースとは、逆方向にボールを置きました。
三笘選手:「ボールを逆方向に置いた時に、アーノルド選手が前に来てくれた」
内田さん:「わざとそっちに置いた?」
三笘選手:「そうです。後ろを見ながらパスを出すフリを。見せることによって、警戒してくれるので」
突破しやくするため、ディフェンスを動かしたい三笘選手は、パスを匂わせます。
内田さん:「アーノルド選手を動かすために、ボール1個分ですけど(逆方向に)置いて、視線も動かす。分かりやすいけど、できないんだよね、これがね。ボールを逆に置かれたらディフェンスはずれる。50センチから1メートルの違い」
アーノルド選手が1歩ずれたことにより、理想のコースへスタートを切れた三笘選手。ドリブル突破の裏には、わずかな時間で仕掛けた駆け引きがありました。
■突破のカギ(2)静止とインステップ
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さらに、縦への突破を成功させるために、三笘選手ならではの驚きのテクニックがありました。
内田さん:「どこを狙いますか。1対1の場合」
三笘選手:「自分の形にどう持っていくか。静止状態を自分で作って」
内田さん:「こっちも止まる」
静止状態とは、自分とマッチアップした相手が止まった状態のこと。それが何につながるのでしょうか。
三笘選手:「相手が止まってないと、一緒のスタートダッシュが切れない」
内田さん:「速い。今、軽くやったと思うんですけど、僕が思ってたよりも速い。三笘選手がいってから、僕らが出る。すごく速いから、こちらが速くても対応できない。すげぇわ」
自ら作り出した静止状態から、一気にディフェンスをかわす。このスタートダッシュで、多くの相手を置き去りに。そして、内田さんは、それを可能する三笘選手の足の動きに注目しました。
内田さん:「(ドリブルを仕掛ける時)多くの選手はボールをインサイドで運ぶ。ただ、三笘選手はインステップで持っていく」
一般的にドリブルを仕掛ける際、ボールを扱いやすいインサイド(足の内側)を使って運び出します。しかし、三笘選手は、ボールをインステップ(足の甲)で仕掛けています。なぜコントールが難しいインステップを使うのでしょうか。
三笘選手:「インサイドは股関節をねじるから、スピードに乗れない。100メートル走でも、最初のスタートはインステップから入る。それと一緒の原理ですね。よりスプリントに近い形」
三笘選手は、短距離走のスタートをきるような足の運びをするために、インステップを使って、ドリブルを仕掛けていました。これにより1歩目を速くすることを可能とし、スピードあるドリブルを生み出していました。
内田さん:「そういうのは自分で考える?誰かの映像見たりして考えたりする?」
三笘選手:「小さい頃はネイマール選手を見てて、その抜き方を初めて見ました。それを真似したのがきっかけで、練習して身に着けようとしました」
内田さん:「俺もネイマール見てたけどな。おかしいな」
内田さん:「対面してやっぱり分かりますね。速いし、タイミングですね。気付いた時にはもう遅い。対策して、頭で考えれば考えるほど、三笘選手が後出しじゃんけんで勝てる。完成度も高いし、すごく良い選手」
内田さん:「雨の中、すみません。ありがとうございました。どうでしたか?」
三笘選手:「現役の内田さんとマッチアップしたかったなと」
内田さん:「僕は本当にマッチアップしなくて良かったと思います」
三笘選手:「本当に楽しかったです」
最後に三笘選手へ、ある質問をぶつけてみました。
内田さん:「三苫選手にとってドリブルとは何ですか?」
三笘選手:「ゴールを奪うための手段ですけど、ドリブルがあるからこそ、ここまでこれたと思っています。ドリブルで抜いてくプレーは、僕もそうでしたけど、子どもや観客を楽しませるプレー。そういったプレーをして、色んな人に夢を与えたい」
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