コラム

映画ビリギャルの感想・評価。元京大塾講師の本音。

今日は映画『ビリギャル』についてレポートします。

映画の作品としての感想では無く、その映画内で描かれていたさやかの受験の過程について気づいたことを書きます。

 
映画自体は感動的で面白かったです。

1度目は映画館で観ていて、この記事を書く前にアマゾンで見直した2回目にもすごく楽しめました。素晴らしい映画です。
映画自体の感想はあとがきに少し書きます。

 
さやかの受験過程を観て一番に印象に残ったことは「極めて現実的である」ということです。
映画公開時に最初にタイトルを聞いたとき「東大ではないんだ」と思ったんですが、まさにそれにつきます。

 
映画内でさやかは2014年度入試を受験していましたが、実際のビリギャルの慶應受験はもっと過去の出来事です。
しかし、今回は一部現実のモデルについても触れますが、基本的に年度や受験科目などの諸条件は映画の設定を鵜呑みにして考えています。

 
TOP画像は映画でも登場シーンのあった慶應の三田キャンパス。
慶應の中でも特に歴史と伝統のある慶應のシンボルになる校舎の1つです。

 

(目次)
・高2の夏から勉強を始めている点
・合格校が慶應でも総合政策学部であること
・現実のさやかは名門進学校に中学入試で合格している
・「だからビリギャルは大したことない」と言いたいわけではない
・リアルビリボーイの話

 

高2の夏から勉強を始めている点

受験勉強を開始する時期というのは人それぞれに様々ですが、高2の夏というのは特段遅いわけではありません。

僕自身も進学校に通っていましたが、その時に周りの友人を見ていた感触では、

高2の時点からあれだけスパートをかけられるのはむしろ受験に対する意識が高い方であり、
準備期間という意味でも至極まともな方で、戦略的と言ってもいいです。

一方で、小4レベルからのジャンプアップはさすがにすごいですね。
ただこの点については現実のモデルとの間で疑問が残るので後述します。

 
映画では中学英語を三週間で終わらせたというエピソードが紹介されていましたが、
それについても、中学三年間の英語の授業時間は約350時間であり。

これはあくまで公立中学のスローペースな授業ですから、高校生のさやかが自学自習で効率的に勉強することでそれを半分の時間で済ませたとすると、175時間。

それを3週間の21日で割ると1日約8時間の勉強でこれを消化できることになります。

実際には後述するようなさやかのスペックにおいては1/3以下には圧縮できるでしょうから、英語に加えて日本史の勉強と遊びを両立することも体力次第では全くもって不可能な話ではありません。

それを継続させたさやかの努力と根性は秀でたものがあります。

 

合格校が慶應でも総合政策学部であること

実は彼女は第一志望の文学部には落ちています。そしてSFCに合格。
この点は本当にありそうな話だと思いました。

なぜなら受験界ではSFCは元来入試科目が少ないことで有名ですから。

※SFCとは湘南藤沢キャンパスのことでさやかの合格した総合政策学部などがあるキャンパスであり、そこにある学部の愛称。

 
2014年度入試の文学部の入試科目が『日本史100・英語150・小論100』の配点であるのに対して、
SFCはさやかの場合『英語200・小論200』の2科目。

これでSFCが簡単だとは言いたいわけではなく、あくまで単純な科目数やその準備のしやすさの話です。

それで、さやかの合格校はSFCですから結局さやかは得意科目だった英語を使って慶應に入ったことになります。
苦手だった日本史は結局点数になっておらず、さやかは1年半勉強した英語と小論の2科目での合格ということ。

これはつまり3科目以上の入試だったら難しかったということや、志望校が元より国公立ではないことなど、
かなり現実的な受験過程と言えます。

国公立なら地方でもセンター試験で5教科7科目あるので、さやかのように2~3科目に絞った勉強なんてできませんから。
ましてや東大ではないところはノンフィクションの落とし所として正しいです。

 

現実のさやかは名門進学校に中学入試で合格している

僕も塾講師をしている時に受験科(中受組)の小学生と関わることがありましたが、有名校に合格する生徒というはもう小学生の頃から周りの一般的な生徒とは全然質が違います。

センスを持っているものです。

例えば一度教えてもらったことをほとんど忘れない子、小学生ですでに珠算・暗算の高段者、塾講師の僕でも解くのに時間がかかる空間図形の問題を瞬時に解く子。
こういった子たちは中受組でもやや特別ではありますが、全体的に有名校に中学受験で入る子は天才・秀才・高スペック・努力を厭わない。

いわゆるギフテッドです。

そういう素質を持った子たちと関わっていて何度も彼らの才能に対して羨ましいと思ったことがあります。

したがって、さやかも中受をして有名校に合格している時点ですでにセレクションされた学生ということです。

 
ここで疑問が生じるんですが、映画ではギャル時代のさやかの学力が小四レベルという設定になっていました。
しかし、このような中受を経ている時点でそれはありえません。

たしか塾の先生が入塾前のテストにおいてそういう判定を出したんでしたよね。

この点においてはさやかがそのテストに対してやる気がなかったか、もしくは他の何らかの理由があったか。
原作において手が加えられていたのか、映画に脚色がなされたのか。

むしろこれは映画であるのだから映画化される時点で脚色されることに問題はありません。

 
しかし、結局は小四レベルからの1年半で慶應という非現実性は実際に非現実的であるということです。
あくまで‘性’や‘的’と書いているように可能性が無くはありません。

そして、今回のサクセスストーリーの実際的なところをまとめると、

ビリギャル本人には十分な才能があったけど一時的にサボっていて、高2からは勉強を初めて2科目入試のSFCに合格した。

この事実というは全くもって特別な出来事ではないし、後から書く『リアルビリボーイ』のように、むしろ進学校の落ちこぼれ組に限って言えばよくある話なんですよね。

 

「だからビリギャルは大したことない」と言いたいわけではない

僕はこの記事で「さやかなんて別に普通ですよ?」などと冷めた主張をしたいわけでは決してありません。

さやかが戦略家だったとはいえ、1年半の勉強量は並大抵ではなかったはずです。
友人たちが青春を謳歌している中、自分だけは周りの誰よりも努力をしていたさやかを尊敬します。

僕がこの記事で伝えたいことは、まず落ちこぼれにはいくらでも逆転の余地があるということです。
今落ちこぼれているからそれがどうした、明日から頑張ればいいじゃないか、と。

そして、おそらくこの映画の意義の一つである、落ちこぼれでも努力は報われるというメッセージを僕もそのまま伝えたいですね。

どれだけ落ちこぼれていても戦略を持ってさやかように受験に臨めば必ず結果はついてきます。

 
そして、それがSFCだろうと慶應は慶應。

何学部でも慶應に変わりありません。

ごく一部のネット上の意見では偏差値や入試科目数の細かいところを見てSFCを他学部より軽んじる風潮がありますが、大多数の人にとってはSFCも慶應です。
さらにいえば今回の話は比較的難関とされる一般入試からの慶應でありましたが、それがもし推薦入試やAO入試であっても同じです。

一般的な見方ではどうやって入ったかなんて関係ありません。

慶應は慶應です。

慶應!?すごいやん!とかカッコいい!ってなります。

もちろん感情的な問題だけではなく、今後の人生で慶應から得られる経済的な恩恵がでかい。
さやかが慶應を諦めていた場合と、合格した今では人生を豊かにする確率が全然違います。

だから、散々遊び呆けても最後に慶應に滑り込んださやかは受験において勝ち組みであるし、そんなさやかから学ぶことは多い。

 

リアルビリボーイの話

実際に僕の高校時代の友人にもさやかと同じようなやつがいました。
ビリギャルも現実のモデルがいるリアルではありますが、僕にとって身近な人という意味でリアルビリボーイ。

高校2年生の時僕が学年最下位をとったときに、下から二番目だったやつ。

僕自体も落ちこぼれだったわけですが、類は友を呼ぶと言うことで他の底辺組の事情もだいたいは知っていました。
そいつはあまり自分のことをひけらかすタイプの人間ではなかったんですが、僕は彼の内に秘められた自信には気がついていました。

 
彼の第一志望は慶應法学部。

先ほど慶應は慶應で入り方や学部なんて世間的には関係ないというようなことを書きましたが、単純に難易度の比較でなら推薦で慶應に入るのと一般入試での慶應法は雲泥の差です。

そういうキワを責める彼のことを面白いと僕は思っていました。

それで、彼も高校3年になってから受験勉強を始めたようでした。
この時点でビリギャルよりも出遅れていますね。

さすがに最下位付近からの出発で現役の時の受験には失敗して、僕と同じように浪人をすることになりました。

僕と予備校は違ったんですが、浪人の時に彼は1日10時間も勉強をしていると聞きました。
もともと、オーラを持っているやつでしたので、それを聞いた時に「やっぱりやるときはやる男だ」と尊敬していました。

僕は彼の慶應法学部合格を確信していました。

 

 

 
結果的に彼は慶應法学部には合格できませんでした。

正直僕はびっくりしました。
あいつが本気になっても合格できないって、慶應法ってどんだけ大きな壁なんだと。

最終的に彼は併願先の慶應文学部に合格。
僕にとってはリアルビリボーイです。

 
以上。

 

 


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あとがき

映画で僕が一番感動したというか、ぐっと心に刺さったのは、
さやかがさやか含めて友達4人で温泉に入っていたシーンです。

まず、温泉のシーンの前。
温泉に行くことを提案する駐輪所で、友達は話したいことがあるということをさやかに告げました。

この時ヒヤっとした人も多いと思います。

僕のイメージではこういう女子同士のドラマというのはきつい意地悪を言ってくる女子というのが定番だからです。
ここまでの映画の話の過程からそう言った水を差すような展開は予想し難いと思いましたが、僕も、どうなるんだと少しドキっとしました。

それで連れて行かれた温泉で、いわゆるいつメンに優しい言葉をかけてもらったさやか。
あのやりとりに泣いてしまいました。

 
理由は1つです。

さやかの気持ちになることができたから。

先ほど『リアルビリボーイ』の話を書きましたが、僕自身も真面目に大学受験を通過したクチです。

受験勉強は本当に個人戦でした。

クラスメートや先生と一緒に頑張っているといっても、勉強するのは自分。
大学受験にもなると、内容が内容なので周りの人間がどうにか計らうということも難しいです。

全責任・結果に対する責任の所在地が自分です。

 
また、僕に限って言えば、浪人をしていた時は授業にも出ていませんでしたので、精神面だけではなく物理的にもずっと一人でした。
さやかも、クラスは底辺クラスという設定でしたし、友達もああいうノリなので、一人きりの戦いですよね。

塾の先生や名大を受験した彼も仲間ではありますが、やはり勉強というのは孤独な作業です。

そんな受験勉強を一生懸命していると知らず知らずのうちにストレスが溜まっています。
ずっと気が張り詰めているし、肉体に蓄積される疲労もあります。

おそらくさやかは温泉のシーンの時にはすでに1年くらい勉強をしていて、ずっとメンタルの限界点に近いところで頑張っていたのだと思います。
そんな時に友達から暖かい心からの言葉をもらえた時、いっとき、ずっと張り詰めていた心がリラックスしたんでしょうね。

そういった、苦しんでいた心がふと解放される、そんなさやかの気持ちはよく解りました。
だから、あのシーンにおいてさやかに入り込んでしまっていた僕は、さやかと一緒に感動をしました。

 
受験生のリアルとさやかの心の動きが上手に描かれていたシーンでした。

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